◎香りに鼻を向け感度高めて未来を探ろう。大切なものは目に見えない。                 印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |

かおりエピソード

万人が好む香りはない。

よく、ラベンダーの香りは多くの人に好まれる香りと言われていますが、100人のうち1人くらいの割合で、ラベンダーの香りを受け付けられない人がいます。
年齢や性別によってラベンダーの好み度合いは変わります。子どもの時は好きだったけれど、成人してからはあまり好きではなくなったというような事は、よくあります。

それでは、人の香りの好みや嗜好は、どこからくるのでしょう。

あなたが知らない、
香りの記憶

香りの好き嫌い〜生理的記憶と心理的記憶(経験的記憶)〜

人類が誕生してから200万年とも言われていますが、誕生以来、人の行動を通して様々な出来事や、身の危険、身の安全などの集約的記憶が小脳に蓄積され、やがてDNAに残され続け人類は存続しつけてきました。

存続の背景には、DNAに刻み込まれたモノに対する対応の仕方、危険なものと安全なものの見極めを五感で判断出来るよう代々そのノウハウをDNAを通して引き継がれています。

生理的記憶 (個人誕生前からDNAに書込まれた人類の本能的嗅覚反応データベース)

赤ちゃんが、なんの経験もないのに身に悪影響を及ぼす物質が放つモノ(匂い)を提示すると顔を背け拒否する行動や、ガス漏れの匂いやキナ臭い匂いに反射的に反応するのも、こうした人類200万年の経験則に基づく、適切な判断なのです。これが、生理的記憶です。

個人の嗜好や気分にまったく左右されない本能的な反応です。民俗的なブレは多少あるにしろ、人の人体に影響を及ぼす物質が醸し出す香りや匂いに反応する嗅覚情報のデータベースが200万年間更新され続けているのです。

心理的記憶 (個人の誕生後に蓄積された嗅覚反応データベース)

個人が、誕生してから今日までに経験した香りのデータベースは、人様々です。良い思いをした物質(美味しい食べ物、好きな人等)にまつわる香りはすべて受入れる心理反応を示します。

逆に、イヤな思いをした物質(体調に異変をきした食品や、イヤな思いをした人や場所)にまつわる香りや匂いに対しては拒絶の心理反応を示すデータベースに記憶が残ります。

ラベンダー精油を間違ってこぼし、大量に香りを嗅いでしまい頭が痛くなったり、毎日イヤな思いをしながら働いた空間の匂いなど、その後の人生で再度出合うと、イヤな記憶に結びつきやすく、やがて拒絶の反応を示すようになります。

乳幼児は、視覚よりも先に嗅覚が機能している

ほ乳類は太古、海中生活を営みやがて地上に生息するようになったと言われていますが、その名残が、赤ちゃんの誕生から出産に至る過程に残っています。

赤ちゃんが母親の胎内にいる間は、羊水とよばれる体温より少し高い温度の水の中です。羊水には塩分も含まれており、その塩分濃度は古代地球の海の塩分濃度と同じと言われています。水温も今より高く、丁度、羊水の温度に近いとも言われています。

やがて、赤ちゃんが胎内から誕生すると、一気に水中から陸上つまり水の中から、空気の中に出てくる訳です。エラ呼吸こそ無いですが、水中から重力のある地上に降り立つという意味では、先の話に繋がる部分が多いです。

現在でも、サメなど水中で生息する生物の多くに嗅覚を備えている事は周知の事実で、嗅感覚器は水中で機能する感覚器なのです。地上に上がったほ乳類である我々も、その痕跡として常に嗅感覚器は塩分を含む適度な湿度で保たれているのです。言い換えれば、嗅感覚器は常に海水に覆われているといっても良いのではないでしょうか。

よく、犬の鼻が乾くと具合が悪くなると言われていますが、我々の鼻は見えにくい奥の方にありますが、やはり湿度が低くなると、様々な香りを識別する能力が低下します。

そうした事から、赤ちゃんは母親の胎内ですでに母親の体臭はおろか、母親の好みの食品臭もすっかりと刷り込まれて、この世に出てくるのです。

誕生の瞬間に、はじめて肺呼吸を行い、同時にその場の空気臭も嗅いでいるのです。その時嗅いだ香りや匂いは、その赤ちゃんにとって基準臭となり、その瞬間から、心理的記憶のデータベースへの書き込みが始まるのです。

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